過去の修復
過去でもなく、未来でもなく、「今 」を一生懸命に生きる!
これこそ、いちばん大切なこと! と、世間では、よく言われます。
たしかにその通りだと思います。
ですが、
「今」 が、ここに在るということは、それに相応しい「過去」が存在していたということにもなります。
なぜ、今、自分はこのような状況にあるのか?
それを知る手立てとして、これまでの「過去」の人生を振り返ってみることが大切。という考え方もあります。
しかし、一方で
あくまでも、過去は過去であり、今更、過去の出来事を思い出して、過去を悔やんでみても、どうする事も出来ないならば・・・
一層のこと、過去に意識を向けて嫌な気持ちになるよりは、過去を切り捨て、過去に捕らわれず、過去を振り向かないで、今を精一杯、生きる事がいいのかな〜〜
どちらも一理ありますよね。
過去って、変わらないと思っていますよね。
でも、もしもですよ。
自分の「過去」に手が入り、そして、嫌だと感じている「過去の一部」を修復する事ができるとしたら・・・
あなたは、それをしてみたいと望みますか?
ある時、小学校時代にクラスメートから、毎日、毎日、繰り返しいじめを受けたという男性が来られました。
あれから30年以上経ちますが、その当時の事を思い出すと、今でも、とても嫌な気持ちになってしまうとのことでした。そして、殴られた時の痛かった身体感覚もまだ残っているし、人前だと常に身体が緊張して、首肩辺りに力が入ってしまう。とおっしゃっていました。
その彼が、自分の過去に手を入れて、その部分と向かいました。
記憶喪失にでもならない限り、過去の出来事を忘れる事はできませんので、過去に何が起きたのか、その当時の記憶は消せませんが、その事件に伴う「ネガティブな感情」と、それ以降、引き続いていた「身体的な不快感」は、完全になくなりました。
スタッフ>
今回、内観の参加申込の際に、あなたは幼い頃、お父さんから激しい暴力を受けたことがあり、とても辛い経験をされたと書いて下さいましたが、今はどのようなお気持ちですか。
参加者さん>
はい、すでに過去の事となってしまったので、今は気にしていません。
最近では、「そんな事が過去にあったんだな〜」と、他人事のように思い出す事が、稀にありますが、でも、日常生活で特に問題と感じることもなく、普通に暮らせています。
日頃は忘れていた、心の奥底に隠れていた父親に対しての怒りや憎しみ、悲しみ、恐怖など、「マイナスの思いや、ネガティブ感情」が徐々に思い出されてきました。
そして、それらの事を紙に書く作業を続けていると、次から次からへと、その当時、味わっていたネガティブな感情が吹き出てきました。
内観を始める前は、すでに過去の事なので、もう気にならない!
・・・とおっしゃっていましたが、
彼の過去はその当時のまま、まったく修復されていなかったのです。
過去は過去。
過去に意識を向けても、何一つ、得する事はないから
過去を思い出したら、再び混乱してしまいそうだから
1日も早く過去を忘れたいから
一般的には、辛い過去には意識を向けたがらない傾向があります。
御尤も(ごもっとも)な事だと思います。
でも、彼の場合には
あえて記述式内観の研修中に過去に意識を向け頂きました。
そして、その当時、父親に対して感じていたマイナスの思いや、ネガティブな感情を、あるルールに従って、紙に書いて頂きました。
その作業を、丸1日掛けて続けて頂いた結果、彼の心の中で燻っていた父親から受けた「暴力に関するネガティブな感情」は消えてゆきました。
信じがたい事ではありますが、1日の内観を終えた彼の心境として、
父親に対しての「わだかまり」は、一切、ありませんでした。
記憶喪失になったわけではありませんので、幼い頃、父親から暴力を受けたという事実はしっかり覚えてはいますが、でも、それに伴うネガティブな感情や思いが無いのです。
過去の自分に光が差す瞬間
心の中にある、父親に対しての心のゴミ(マイナスの思い & ネガティブ感情)が消え去ると、その後は、自然に、父親に対して感謝の気持ちが沸き起こります。
本音では「ありがたい」とは、まったく感じていないのに
無理をしてでも、意図的に、父親に対して
「感謝しなければ!」
「感謝しなければならない!」
と、自らに言い聞かせるかのように
自分自身をある方向に、意図的に仕向けるような辛い努力を一切しなくても、あるがままの自分で居るだけで、自然に、父親に対して、感謝の気持ちが溢れてくるのです。